2018
06/17
日

2017年12月にフルモデルチェンジし、3代目となったマツダ・フレアワゴン。マツダの軽自動車はすべてスズキからのOEM供給を受けて販売されているが、このフレアワゴンの初代はスズキ・パレットのOEMモデルとして誕生。2代目はスズキ側が車名を名称変更し「スペーシア」となったもののマツダはフレアワゴンのままであった。そのスペーシアが2017年12月に2代目へフルモデルチェンジし、同時期に3代目フレアワゴンとしてのデビューとなった。
3代目フレアワゴンではスズキ版同様に広い室内空間や乗降性のしやすさ、快適性を向上させつつ個性的なデザインの採用やたくさんのボディカラーの設定で実用性とデザインを両立させたモデルに仕上がっている。また、先代の後期より導入されたマイルドハイブリッド機構の「S-エネチャージ」は正式に「マイルドハイブリッド」としてパワーアップ。モーター(モーター機能付き発電機)の出力向上にともなってアシスト時間の増加やアシストのみでの走行(※最長10秒間)やパワーモードを備えるなど順当な進化を果たした。さらに自動ブレーキの「デュアルセンサーブレーキサポート」を全グレードで標準搭載とするなど安全性能を強化している。

エクステリアではフロント部に厚みをもたせ、フロントガラスを切り立った形状に。丸四角いボディに高いベルトラインで室内の広さと見た目にも大きさを感じるデザインとした。また2代目ではスーツケースをモチーフにボディサイドに施したくぼみ(ビート)を与えやサイドドアガラスを囲んだドアにして旅に詰め込むスーツケースのワクワク感を想いながら個性や遊び心を与えた。エクステリアデザインはOEMに伴いフロント&リアのエンブレムがスズキマークからマツダマークに変更になる程度で、専用のデフォルメは特になし。

インテリアでは水平基調のインパネ形状に運転席前の視界を確保し開放感と広々した室内空間を演出。また、内装でもスーツケースをモチーフにしたグローブボックスを取り入れるなどエクステリアと一体感あるデザインとした。こちらもステアリングホイールのマツダマーク以外のデザインはスズキ版と同じ。

パッケージングでは「軽量衝撃吸収ボディ」を採用。低床を維持しつつ全高をあげることで先代モデルよりも室内高をアップ(1375mm→1410mm)させ居住性を向上させた。さらに前モデルよりも前後乗員間距離を拡大し足元空間を広げている。また、スライドドア開口幅を20mm広げたり、開口部を20mm高くするなどしより後部座席の乗り降りをしやすくした。

さらにパワースライドドアが閉まる動作中にドアロックを予約できる「パワースライドドア予約ロック機能」や、任意の位置でスライドドアを一時停止できる「ワンアクション電動スライドドア:一時停止機能」を採用し後部座席への利便性を高めた。

快適装備では車内の空気を循環し、エアコン使用時の前後席の温度差を少なくする「スリムサーキュレーター」をリアのルーフ部分に採用。

また、エアコン風を段階的に拡散させることができるエアコンルーバーも軽自動車で初採用した。その他ではリヤドアトリムに引き出し式ロールサンシェードの採用や、後部座席へのパーソナルテーブルの左右設置(※ハイブリッドXSグレードのみ)し、ライト自動消灯システムを全車に標準装備とした。

メカニズムでは先代までISG(モーター機能付き発電機)を使ったS-エネチャージだったが、2代目ではこのISGを高出力化し、かつリチウムイオン電池を大容量化したことによりマイルドハイブリッドにパワーアップ。

モーター単独によるクリープ走行(最大10秒)や幅広い領域(発進から約100km/hまでの加速時)でのモーターアシストでさらなる低燃費を実現した。
エンジンは2代目フレア(6代目ワゴンR)のR06A型をベースに、エンジンの冷却性能を強化(※自然吸気エンジンのみ)。CVTも5kgの軽量化を実施し、ISGのモーターアシストによるトルクアップやエンジンとCVTの制御によって力強い加速でスムーズに走行できる「パワーモード」を初搭載した。
ボディ骨格には軽量&高剛性の「軽量衝撃吸収ボディ」を採用。低燃費性能に加え、軽量・高剛性を両立させた。さらに、防音材や遮音材を最適に配置することで静粛性もアップさせている。
自動ブレーキ面ではリヤバンパーに内蔵した4つの超音波センサーが車両後方にある障害物を検知し、自動でブレーキをかけることで後退時の衝突回避または被害軽減を図る「後退時ブレーキサポート」を軽自動車で初採用。このほかデュアルセンサーブレーキサポート、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシスト、後退時ブレーキサポート、後方誤発進抑制機能、リヤパーキングセンサーを備えた。なお、スズキ版でオプション設定されていた「全方位モニター用カメラパッケージ」(フロントガラス投影式のヘッドアップディスプレイ、ボディ4隅のカメラ、左右確認サポート機能など)は未設定となる。

フロントデザイン。3代目フレアワゴンではベーシックかつファニーフェイスな顔つきが特徴だ。初代よりもさらに女性向けな要素が増え、この手の主要ターゲットを意識したデザインとなっている。なお、メッキグリルは上級のXS系グレードに標準装備で、XG系グレードでは非装備となる。マツダ仕様としてはエンブレムがスズキマークからマツダマークになっている程度で、専用のデフォルメパーツなどはつかない。

上級グレードではスズキ版同様にオプションの「アップグレードパッケージ」を選択するとロービームにLEDヘッドランプとLEDポジションランプを標準装備する。LEDを用いることでそれまでのHIDよりも省電力性を高め、同時に夜間の視認性を両立させている。

サイド。2代目スペーシアはボディサイドに施したくぼみ(ビート)を与え、サイドドアガラスを囲んだドアとなっている。メーカー曰く「スーツケース」がモチーフなのだがこれはどうこう置いといて個性や遊び心という面では他のモデルに似ていない独自性をもったデザインになっている。この点は似たり寄ったりなこの手のモデルにおいて評価したいポイントだ。X系グレードのオプション、「アップグレードパッケージ」を選択するとLEDサイドターンランプ付ドアミラーも標準装備となる。

ボディカラーはスズキ版とマツダ版では異なり、一言で言うと「シンプルな構成」となる。スズキ版のスペーシアでは上級のX系グレードではモノトーン10色、ツートーンカラー4色の計14色を。ベーシックなG系グレードではモノトーンのみで10色を設定していたが、2代目フレアワゴンでは上級のXSがモノトーン6色でツートーン2色の計8色。ベーシックなXGがモノトーン6色。内装色はスズキ版では上級グレードでベージュかブラックかを選択できたが、マツダ版では上級グレードでツートーンカラー(2トーンルーフパッケージ)を選択したときのみベージュカラーとなり、それ以外はすべてブラックの固定色となる。

足元はXG系グレードが14インチフルホイールキャップ。

XS系グレードが「アップグレードパッケージ」選択時、14インチアルミホイールとなる。ホイールキャップはマツダ版とスズキ版で明確にデザインが異なり、スズキ版ではスーツケースのキャスターを意識しものだったが、マツダ版ではオーソドックスなデザインに。アップグレードパッケージ選択時のアルミホイールはスズキ版とデザインが同じでスーツケースのキャスターを意識したデザインとなっている。

リア。上部両サイドにコンビランプを配置するなど基本的なデザインは先代に近いのだが、コンビランプは標準モデルでもメッキパーツを使いより上品に。さらにバックランプと反射板をコンビランプから独立させたことでコンパクト化。すっきりとした印象になっている。もちろん、ストップランプはLEDでエマージェンシーストップシグナル付き。マツダ仕様としてはエンブレムの変更程度でリアゲート中央部にマツダマーク。スペーシアでは右下だったがフレアワゴンでは左下に車名の「FLAIR WAGON」エンブレムがつく。右下のハイブリッドエンブレムはスズキ版と同じだ。

エンジンはR06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのみでこれにISG(モーター機能付き発電機)と専用リチウムイオン電池を組み合わせたマイルドハイブリッド仕様となる。エンジンの最高出力は52ps(38kW)/6500rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/4000rpm。モーターの最高出力は3.1ps(2.3kW)/1000rpm、最大トルクは5.1kg・m(50N・m)/100rpm。リチウムイオン電池は5個搭載し、最大容量は10Ah。2代目・後期で採用されたS-エネチャージ仕様よりもモーターの出力&トルクがアップし、リチウムイオン電池も容量が増えたことで動作領域やアシスト時間が増え「マイルドハイブリッド」となった。モーターの出力は3.1馬力とたいしたことないように見えるが最大トルクは5.1kgもあり、エンジンと組み合わせると理論上は11.1kgに達する。これは一般的な軽ターボ車に匹敵するトルクで、自然吸気エンジンながら力強い加速を実現している(※理論上なので実際はここまでトルクが出ていない点とアシスト時間に限りがあるのでいつでも出せるわけではない点に注意)。
トランスミッションは全グレードでCVTのみ。駆動方式はFFまたは4WD。安全装備としては運転席、助手席SRSエアバッグに加えてフロントシートSRSサイドエアバッグを全グレードで標準装備。横滑り防止装置のDSC、ヒルホールドコントロール(TCS)も全グレードで標準装備。

自動ブレーキとしては上述の「デュアルセンサーブレーキサポート」を全グレードで標準装備。単眼カメラとレーザーレーダーの組み合わせで人や車を夜間も含めて検知する。このほか「後退時ブレーキサポート」を軽自動車で初採用し、「誤発進抑制機能」、「車線逸脱警報機能」、「ふらつき警報機能」、「先行車発進お知らせ機能」、「ハイビームアシスト」、「後退時ブレーキサポート」、「後方誤発進抑制機能」、「リヤパーキングセンサー」を全グレードで標準搭載。

インパネ。水平基調を基本にアッパーボックス付近にスーツケースのようなデザインを取り込むことでエクステリアとの一体感を演出。先代モデルとは異なる独特の雰囲気が与えられた。なお、基本はブラック内装で固定されているが、ツートーンカラー選択時のみ内装色がベージュ色になる。なお、マツダ仕様としてはステアリングホイールのマツダマークが与えられる程度でこれ以外はベースモデルと同じ。

インパネ左側のアッパーボックスは実用性はもちろんのこと遊び心あるデザインとなっている。

スピードメーター。タコメーターは非装備でシンプルな1眼メーターとなる。中央の液晶はマルチインフォメーションディスプレイ。

フロントシートはベンチシートタイプ。

リアシート。もちろんスライド機構付き。

ラゲッジルーム。

リアシートを倒した状態。

2代目フレアワゴンは個性的なったエクステリアにさらに広くなった室内空間、パワーアップしたマイルドハイブリッド機構と自動ブレーキなど競争の激しいハイト系ワゴン市場で他社に負けない魅力が追加されたフルモデルチェンジとなった。スズキ版と比べるとかつてのマツダ版軽自動車のようなデフォルメがエンブレム以外に一切ない点と非設定のメーカーオプション、「全方位モニター用カメラパッケージ」や一部削られた安全装備の部分など簡略化されたことにより少し残念な部分もあるが先代よりも確実に良くなったことは間違いないので順当なフルモデルチェンジといえよう。また、エンブレム効果によりスズキ仕様とは少し異なる雰囲気もあるため、スズキバージョンが好みでないとかマツダ仕様がほしい、あるいは他人と被りたくないという人には嬉しい1台である。OEM元のスペーシアと比べるとマイナーなため、ニッチなニーズ向けの軽自動車といったとこだろうか。
- 関連記事
スポンサーサイト
AFTER「【2代目】ジムニー サマーウィンドリミテッド(JA11型)」
BEFORE「三菱 アイ スポーツスタイルエディション(HA1W型)」
MESSAGE
TRACKBACK
メーカー別車種一覧
COMMENT