2017
11/26
日

2002年11月に登場したスズキ・Keiワークス。それまでスズキの軽スポーツモデルといえば「アルトワークス」が有名だったが、この時代はそれまでのベーシックな「アルト」や「ミラ」にかわり「ワゴンR」や「ムーヴ」など室内空間が広く実用性を重視したトールワゴンにシフトしており、かつてのホットモデルは販売低迷から生産終了となっていた。一方でワークス復活を希望する声は少なからず存在し、その声に答える形でターボエンジンを搭載したKeiをベースとしたホットモデルを登場させた。それがこの「Keiワークス」である。
Keiというモデルそのものは1998年10月の軽自動車新規格に登場したスズキでは新ジャンルとなる軽自動車で、背の低いアルトをベースに最低地上高を少し上げてSUVの性格をもたせた「クロスオーバー」なモデルである。ちょうど後継モデルのハスラーがあるが、Keiはその前進モデルで販売終了後も特に雪国では根強い人気を誇ったモデルである。

Keiはデビュー当初はジムニーとワゴンRやアルトの間を埋めるような位置づけのライトなSUVモデルであったが、2000年10月のマイナーチェンジ(中期型)で3ドアを廃止。フロントデザインもファニーフェイス寄りに変更しSUV感を薄めた。これと同時にスポーツ色を全面に押し出した新グレード、「Keiスポーツ」を登場させた。KeiワークスはこのKeiスポーツに交代する形でデビューとなった。

Keiワークスは専用装備として外装では専用フロントグリルに専用バンパー、大型フォグランプ、大型ルーフエンドスポイラー、サイドアンダースポイラー、ローダウンサスペンション、15インチアルミホイール、4輪ディスクブレーキ、5MTのFFモデルではヘリカル式のリミテッドストップデフ(LSD)を標準装備。

内装ではブラックカラーをベースにタコメーター付きシルバーメーター、本革巻ステアリングホイールにドイツ・レカロ社と共同開発した専用レカロシート(セミバケットタイプ)を標準装備。リアシートもワークス専用のシート表皮とし、内外装で大幅にスポーティーな仕様としたモデルとなっている。

フロントデザイン。ワークス仕様として専用となる大型フォグランプ付きのバンパーと開口部をしぼられた専用グリルを装着。元々中期型Keiは女性受けするようなファニーフェイス寄りの顔つきだったが、この専用装備により攻撃的な厳つい顔つきに変貌した。

ヘッドライトはノーマルのKeiと共通。

なお、デビュー当初はワークスのエンブレムがレッドだったが、2003年9月の小改良(7型)でエンブレムの色をブルーに変更。加えてボンネット中央に着いていたブランドロゴマークも旧来タイプから立体的なSマークに変更となった。

サイド。ワークス仕様としてサイドアンダースポイラーと-15mmのローダウンサスペンションを標準装備。このほかフロントグリルと同じエンブレムを前ドアに貼り付けた。

ボディカラーはデビュー当初は標準色として黒系の「ブルーイッシュブラックパール3」、赤系の「ブライトレッド2」、オプションカラーとして灰色系の「マジョーラミディアムシルバー」、白系の「パールホワイト」の4色を設定。ただし、7型以降(2003年9月)で赤系の「ブライトレッド2」を廃止(それ以降は復活せず)となった。Keiワークスはイエローが希少と思われがちだが、この赤も実は希少カラーで特に赤いエンブレムと被ってあまりいい色とは言えなかった部分が不人気で、これも希少なのである。

足元は専用デザインの15インチアルミホイール。ガンメタリックカラーでノーマルのKeiとはかなり印象が異なる。後輪はワークス仕様としてディスクブレーキに変更。4輪ディスクブレーキとなる。

リア。リアバンパーはKeiスポーツと同じタイプ。デビュー当初(6型)のエンブレムはリアハッチ右側にKeiワークスエンブレム。左側にSUZUKIエンブレムとなる。2003年9月小改良(7型)ではSUZUKIエンブレムを廃止しリアハッチ中央にSマークエンブレムを。Keiワークスエンブレムもレッドからブルーに変更となった。

このほかワークス仕様として大型ルーフエンドスポイラーを標準装備。軽自動車に付いている純正リアスポイラーとしてはかなり大きく、フロントデザイン同様にノーマルのKeiやKeiスポーツとの差別化がなされいてる。

エンジンはK6A型3気筒直列DOHCインタークーラー付きターボエンジンのみ。最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.8kg・m(106N・m)/3500rpm。トランスミッションは5MTまたは4ATで、駆動方式はFFまたは4WD。FFの5MTモデルでは純正でヘリカルLSDが付く。車重は最軽量の5M&FFモデルで790kgと4代目アルトワークス(RS/Z)の5MT&FFよりも100kg程度重たい。このためアルトワークスほどの刺激的な加速力は無く、しばし批判される部分でもあった。また、4WDシステムは他のスズキの軽自動車と同じビスカスカップリング式でタイヤが空転すると後輪にも駆動が伝わり、基本はFFとなるタイプだ。ただしスズキの場合は微妙に常時後輪にも駆動力が加わっているため、ときおりフルタイム4WDと呼ばれる場合がある。このビスカスカップリングだが、耐久性に問題があり走行距離や使用具合によってこのビスカスカップリングから異音がするトラブルが数多く報告されている。この部品は2代目と3代目ワゴンR(MC系とMH系)、5代目アルト(HA系)、初代アルトラパン(HE系)などでも部品を共有していたのだが、この車種すべてで部品の延長保証が行われたぐらいで、スズキの持病ともいえる有名な部品となっている。前オーナーが修理しているか確認したほうが良いだろう(自費で修理するとリビルド品で5万円前後、新品で7万前後+工賃がかかる)。

インパネ。ワークス仕様としてブラックをベースにオーディオパネルをシルバー塗装した。

スピードメーター。ベースモデルは黒系の背景だっためシルバーメーターでスポーツな印象だ。ただし専用品ではなく同年代のワゴンRのカスタムモデル(RR)と同じタイプとなっている。

マニュアルのシフトノブ。シフトブーツが軽トラのような旧来品でチープ感が漂う。

ATは旧来の4ATタイプ。マニュアルモードも無く昨今のスポーツモデルと比べるとあまりオススメできない仕様となる。

フロントシートはセミバケットシートタイプ。Keiワークスの特徴のひとつとも言える部分でドイツ・レカロ社と共同開発したレカロシートを標準で採用している。ただし、サーキットで使うようなガチガチのバケットシートではなく街乗りに便利なセミバケットタイプとなっている。一説によれば骨組みをスズキが。シート生地をRECAROから供給されて作ったもので独特のクッション性により長距離運転でも腰に優しい代物となっている。アルトやミラなどの安いシートとはまったく異なる豪華な装備品である。

リアシート。後部座席はさすがにRECAROではないもののワークス専用のシート表皮が与えられ上級感が演出されている。

ただしこのように足元がかなり狭いため、昨今の軽自動車のリアシートのイメージがあるとかなり辛い部分がある。またリアシートのスライド機構も無いため後部座席はかなり窮屈だ。これはKeiの設計時に後部座席よりもラゲッジルームを優先したつくりになっているためで、あくまでKeiワークスは二人乗りメインと考えたほうがいいだろう。

ラゲッジルーム。リアシートの足元が狭かった分ラゲッジルームは広い。

リアシートを倒すと広大な荷室が。フルフラットにもなって扱いやすい。Keiワークスの高い利便性はここにある。

KeiワークスはクロスオーバーSUVのKeiをベースに外装では専用フロントグリルに専用バンパー、大型フォグランプ、大型ルーフエンドスポイラー、サイドアンダースポイラー、15インチアルミホイール、ローダウンサスペンション、4輪ディスクブレーキ、5MTのFFモデルではヘリカル式のリミテッドストップデフ(LSD)を。内装ではブラックカラーをベースにタコメーター付きシルバーメーター、本革巻ステアリングホイールにドイツ・レカロ社と共同開発した専用レカロシート(セミバケットタイプ)を標準装備。リアシートもワークス専用のシート表皮とし、内外装でKeiスポーツよりもスポーティーな仕様とした軽スポーツモデルである。アルトワークスと比べるとどうしても車重が重たい分刺激的な加速が無く、しばしけなされる部分があるもののKeiワークスがデビューした当時は冒頭にも述べたがワゴンRやムーヴなどの軽ワゴン全盛期。硬派なマニュアル&ターボの軽スポーツモデルがほとんど無い状況で、マニュアルの軽スポーツといえばこの「Keiワークス」か「初代コペン」程度しかなかった。そのため軽自動車でもマニュアル&ターボという需要には少なからず応えられる1台であった。
Keiワークスはこの後2006年4月のマイナーチェンジ(9型)で内装を一新。ボディカラーにスイフトスポーツと同じチャンピョンイエローを設定するなどの後期型に移行する。この変更により内装が派手になるためブラックの落ち着いた内装が好きな人は前期型を。逆に赤黒の内装が好みの人は後期型がオススメである。
中古市場では後継ともいうべき復活した「アルトワークス(5代目)」が登場しているもののマニュアル仕様だと依然と高値が続いている。5代目アルトワークスとは荷室の使いやすさや後輪ディスクブレーキなど細かい部分でKeiワークスに魅力的な部分がありまた、中古車としてみた場合5代目アルトワークスよりも手頃なため意外と需要があるのかもしれない。
ちなみにKeiはマツダのOEM版として「ラピュタ」があるがこの「Keiワークス」も「ラピュタ Sターボ」として販売されていた。ただしKeiワークスのような攻撃的なフロントデザインとはならず、Keiスポーツに似た上品なデザインでマツダ風のデフォルメが与えられていた。中身はまったく同じためマニュアル&ターボを探している場合はあわせて「ラピュタ Sターボ」も探してみるといいだろう。
- 関連記事
-
-
【前期型】スズキ Keiワークス(TA-NH22S型)
-
【後期型】スズキ Keiワークス(TA-HN22S/ABA-HN22S型)
-
スポンサーサイト
MESSAGE
TRACKBACK
メーカー別車種一覧
COMMENT