2017
08/09
水

2006年1月に登場した三菱のアイ。スバルのR1およびR2のような他のどの軽自動車とも似ていない独特なスタイリングに加えエンジンを後方に配置するというこれまた最近の軽自動車では珍しいメカニズムで一躍注目をあびた軽自動車だった。
コンセプトは「軽自動車の新時代を切り開くプレミアムスモール」。それまでの軽自動車の難題であった「デザインと居住性」、「居住性と衝突安全性」の二律背反する軽自動車の課題をアイではエンジンを後方に配置し後輪をメインとして駆動するリヤミッドシップレイアウト(MR)でアプローチしたものであった。アイではエンジンをリア後方に配置したことによりデザインの制約から開放され、ボンネットからフロントガラスにかけてなめらから曲線のデザインが与えられ近未来的なワンモーションフォルムのスタイリングに。またミッドシップレイアウトの特徴を生かしホイールベースは既存の軽自動車ではトップクラスの2550mmを実現していた。また、室内空間はコンパクトカーにも匹敵する居住スペースとラゲッジルームを両立した。

エンジンは新開発となるアルミ製DOHC12バルブMIVECインタークーラーターボエンジンと自然吸気エンジンの2種類を設定。当時の軽乗用車では珍しい吸気側連続可変バルブタイミング機構のMIVECを取り入れ、これにインタークーラー付きターボと組み合わせてターボ仕様でありながら平成17年排出ガス基準50%低減レベル(☆☆☆)と平成22年度燃費基準を達成していた。
サスペンションはフロントにマクファーソンストラット。リアは3リングド・ディオン式を採用。特にフロントはエンジンが無いことによるサスペンションの適切配置により十分なストロークを確保。ロングホイールベースとも相まって上質感のあるフラットな乗り心地と優れた直進安定性、ハンドリングをバランスさせた。さらにロングホイールベースでありながらも最小回転半径は4.5m(同年代のeKワゴンと同程度)を達成している。
衝突安全性もフロント部分に十分な衝撃吸収ゾーンを設けることでエンジンが無いデメリットを相殺。フロント以外では大断面ストレートフレーム構造を設けて衝撃をボディ全体で吸収する構造とした。側面衝突に対してもクロスメンバーやフロア、エンジンなどで全方位衝突安全性を高めている。

そのアイに2006年12月。ご当地ナンバープレートの認証記念モデル第3段として地域限定の特別仕様車が設定された。それがこの「倉敷」である。グレード名からも想像が付くように倉敷の特徴を取り込んだ特別仕様車となっており、最大の特徴としては国産ジーンズ発祥の地である倉敷をイメージさせる専用の「ジーンズ柄シート」を特別装備。これ以外ではSグレードをベースに外装ではプライバシーガラス(リヤドア・テールゲート)などの人気装備や「倉敷」専用デカールを。内装ではアイ専用デザインの純正AM/FMラジオ付CDプレーヤーに加え4スピーカーを標準装備としつつお買い得としたモデルとなっていた。

フロントデザイン。外装に関してはベースモデルのSグレードとほぼ同じ。他の軽自動車は一線異なる独特の顔つきで年数が経過しているもののそのデザインは新鮮だ。

サイド。倉敷仕様ではSグレードではリアドアに非装備のUVカット機能付プライバシーガラスを標準装備とした。一番安いSグレードにはない装備で廉価グレード特有の安っぽさが薄れている。

足元は15インチフルホイールキャップ。

リア。倉敷仕様としてリアゲート右下に専用デカールを特別装備(※ただし写真のものは消えてしまっている)。これ以外ではリアゲート同様Sグレードには非装備のUVカット機能付プライバシーガラス(テールゲート)も標準装備。

エンジンは3B20型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。最高出力52ps(38kW)/7000rpm、最大トルク5.8kg・m(57N・m)/4000rpm。これをラゲッジルーム下部に搭載し後輪を駆動する。トランスミッションは4ATのみで駆動方式も2WDのMRのみとなる。このほか、ABSとセキュリティーアラームを標準装備。

インパネ。Sグレードのと同じブラック内装が与えられる。ただし、シート意外の専用パーツは特になし。

オーディオは倉敷仕様としてSグレードには非装備のアイ専用・純正AM/FMラジオ付CDプレーヤーと4スピーカーを標準装備。

スピードメーターもベースモデルと同じ。

シフトノブまわり。こちらもベースモデルと同じでゲート式。

フロントシートはセパレートタイプ。倉敷仕様として「ジーンズ柄専用シート生地」を採用。国産ジーンズ発祥の地「倉敷」を強く意識した専用装備となっている。軽自動車に奢られた高級シートにはコペン、Keiワークス、5代目アルトワークスなどのレカロシートやジムニー等のアルカンターラ、クオーレモジュレなどがあったが倉敷では珍しいジーンズ柄が採用されている。

リアシート。こちらもジーンズ柄。スライド機構は非装備。

ラゲッジルーム。

アイの倉敷仕様は最廉価のSグレードをベースに倉敷をイメージしたジーンズ柄シート生地に快適装備としてUVカット機能付きのプライバシーガラスと専用の純正オーディオ+4スピーカーなどを標準装備としつつ、価格を抑えた特別仕様車であった。その新車価格はベースの105万円に対しわずか4万9千円アップの109万9千円からと特別仕様車にしては良心的な価格設定となっていた。ターボ仕様がなかったり2WDモデルのみという硬派な設定だったが逆にそれ以上を望まない人にとっては魅力なグレードだったといえよう。中古車としてみても「ジーンズ柄シート生地」を標準装備した軽自動車として非常に珍しいモデルである。
- 関連記事
スポンサーサイト
MESSAGE
TRACKBACK
メーカー別車種一覧
COMMENT