2017
03/23
木

2017年2月にフルモデルチェンジし、6代目となったスズキ・ワゴンR。6代目の大きな特徴は大幅に変更されたデザインとマイルドハイブリッド(旧称:S-エネチャージ)の進化、デュアルカメラブレーキサポートに変る「デュアルセンサーブレーキサポート」や、「ヘッドアップディスプレイ」の軽初採用、さらに広くなった室内空間や利便性能の向上などがあげられる。
まずデザイン面ではそれまでの4代目~5代目にかけてのワゴンRのイメージを大幅刷新。デザインには初代ワゴンRのモチーフを取り入れかつそれまでのノーマルとカスタムモデルの2本構成からノーマルを1種類、カスタムを2種類の合計3種類の顔つきの異なるモデルを設定した。これはワゴンR史上では初の試みで、先行するスペーシアシリーズ(スペーシア、スペーシアカスタム、スペーシアカスタムZ)に続く2例目の3モデル構成となった。なお、本稿で扱うのは3代目ワゴンR(MH22S系)より続くカスタムモデルの「スティングレー」である。

インテリアではワゴンRでは初となるセンターメーターを採用。インパネデザインも水平基調をベースに横長のインパネカラーパネルにより開放的な視界と室内空間を演出している。
先代までの「S-エネチャージ」は6代目で一般的な「マイルドハイブリッド」に名称変更。システムもISG(モーター機能付き発電機)を高出力化し、リチウムイオン電池も大容量化したことでモーターによるクリープ走行(アイドリングストップ後の発進時に最長10秒間)、発進から時速100kmまでのモーターアシストなどが可能となり、ハイブリッド機能の強化とさらなる低燃費(33.4km/L(JC08モード))を実現した。

またボディも軽量化と高剛性を両立した新プラットフォーム「ハーテクト」を採用。足回りやボディ、プラットフォームの軽量化により先代比20kgの軽量化を実現。
安全技術としてはそれまでの2台のカメラを用いた「デュアルカメラブレーキサポート」から、単眼カメラと赤外線レーザーセンサーを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポート」に変更。先代のデュアルカメラブレーキサポートでは非搭載だったハイビームアシスト機能を新たに盛り込み、従来どおりの誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能を搭載している。さらに軽自動車としては初の「ヘッドアップディスプレイ」を新採用。走行中の視線移動を少なく、安全運転に配慮した。

室内空間は6代目で新プラットフォーム「ハーテクト」の採用により完全新設計。室内長は歴代最長の2450mmを実現(先代比で約300mmアップ)し、広々とした室内空間した。また、リアコンビネーションランプを初代と同じバンパー下部に移動したことでラゲッジルームの開口部を100mm拡大。3代目エブリィワゴンのように商用車のような使い勝手を実現した。
そのカスタムモデルとなるスティングレーは、ノーマルのワゴンRとは異なる専用パーツで内外装をドレスアップしたカスタムモデルである。外装では専用ヘッドライト、専用グリルに専用バンパー、サイドアンダースカートにリアスポイラーを標準装備。内装ではブラックインテリアを基調とし、専用インパネカラーやタコメーター付きスピードメーターなどで精悍な内外装としたモデルである。今回のスティングレーとしては4代目となるMH35およびMH55S系ではそれまで歴代のスティングレーのデザインが一新され、より個性的な外観が与えられているのが大きな特徴で、フルモデルチェンジに相応しい内容となった。

フロントデザイン。初代、2代目、3代目と歴代のスティングレーは水平基調のヘッドライト&グリルでノーマルモデルとは異なる刺激的な外観となっていたが、4代目のスティングレーではそれを一新。それまでのトレードマークだったスケルトングリルを廃止し厚みのある2段式メッキ&ブラックグリルと特徴的な縦型ヘッドライトを与えた。イメージは野牛(バイソン)のような顔で、イメージコンセプトも「ストロングビューティー」と、美しくかつ力強いフロントデザインとなっている。

ヘッドライトユニットも凝った作りで、下部がプロジェクター式のLEDヘッドランプ(ハイロー切り替え式)、真ん中がウィンカー。上部がポジションランプ(LED)となる。ノーマルのワゴンRはもちろん、ライバルのダイハツ(ムーヴカスタム)やホンダ(N-WGNカスタム)、三菱(eKカスタム)&日産(デイズ ハイウェイスター)等この手の軽自動車のいずれにも似ていない超個性的なデザインである。

サイド。先代の5代目やその前の4代目ではスタイリッシュな箱型ボディフォルムとなっていたが、6代目ではその雰囲気が薄くなり、再び箱型のイメージが強くなった。ボンネットのエッジは少しきつくなり、Aピラーをスリム化。ドアミラーは小型化し先代よりも下方へ移動。同時にクォーターガラスを広く取ることで右左折時の視界を向上させた。リアガラスも特徴的な台形型とし、リアクォーターガラスを新設して後方視認性を高めている。リアクォーターガラスは3代目ワゴンR以来の復活をはたした。スティングレーではサイドアンダースカート、ターンランプ付きドアミラーを標準装備。

スティングレーでは全グレードでキーレスプッシュスタートシステム(エンジンスイッチ、携帯リモコン、リクエストスイッチ(フロントドア&バックドア))が標準装備となる。このほか全面UVカット機能付ガラス、フロントドアはプレミアムUV&IRカットガラス、フロントガラスはIRカット機能付きとなる。

足元は自然吸気エンジンのハイブリッドXが14インチアルミホイール。

ターボ仕様のハイブリッドTが15インチアルミホイール(切削加工)となる。

サイドのフェンダー部分にはハイブリッドのエンブレム付き。

リア。こちらも大きくデザイン変更され、コンビランプはそれまでの両サイド真ん中から初代ワゴンRのようなバンパー下部に移動した。コンビランプが無くなったことによりリアハッチ開口部は軽商用ワンボックスのように拡大。利便性を向上させている。またスタイリング的にも初代ワゴンRを彷彿とさせるもので、懐かしさと近代風がミックスしたリアビューとなっている。スティングレーではハイマウントストップランプ付きルーフスポイラーにクリアータイプのコンビネーションランプ、専用リアバンパー(リフレクター付き)が備わる。

このコンビランプもヘッドライト同様に作りが凝っていて、中央にバックランプとウィンカー急。これを覆うようにブレーキランプ(LEDタイプ)が配置される。ほかにリアゲート右下にもハイブリッドエンブレムが付く。

エンジンはR06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンと同インタークーラー付きターボエンジンの2種類。自然吸気エンジンは最高出力は52ps(38kW)/6500rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/4000rpm。ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは10.0kg・m(98N・m)/3000rpm。これにマイルドハイブリッド仕様としてISG(モーター機能付発電機)と専用リチウムイオンバッテリーがプラスされる。

モーターの最高出力は2.3kW、最大トルク50N・m。トランスミッションは副変速機内蔵のCVTのみで、駆動方式はFFまたは4WDとなる。安全技術としてはエマージェンシーストップシグナルとEBD付4輪ABS+ブレーキアシスト、横滑り防止装置のESP(車両走行安定補助システム)を全グレードで標準装備。

自動ブレーキ関連ではオプション(セーフティパッケージ)で「デュアルセンサーブレーキサポート」を設定。フロントガラスに設置した2つのセンサーで前方の歩行者や自動車を感知。近距離や夜間の検知に強いレーザーレーダーと歩行者認識が可能な単眼カメラの組み合わせでコンパクトなシステムとした。また、先代には無かったハイビームアシストも新たに追加されより魅力的なシステムとなっている。

デュアルセンサーブレーキサポートでは前方衝突警報機能、前方衝突軽減ブレーキアシスト機能、自動ブレーキ機能により衝突軽減をアシストするほか、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車お知らせ機能、ハイビームアシスト機能が備わる。

さらにデュアルセンサーブレーキサポートのオプション選択時は軽自動車としては初となるヘッドアップディスプレイを新設定。ステアリングの前方にスピードメーターとは別の専用ディスプレイを設けてそこに車速や前方衝突警報/自動ブレーキ作動状況、車線逸脱警報、シフトポジション、凍結警告などを表示することでドライバーの視線移動を少なくし安全運転に配慮した。

インパネ。スティングレーでは歴代同様にブラックインテリアを採用。ただし、6代目ベースではインパネデザインが大きく変更され、それまでのイメージを一新させている。デザインはベーシックなFAやハイブリッドFXと形状は同じだが、インパネ全体をブラックカラーで統一することで上級感を演出。加えてスティングレーでは赤のアクセントカラーやブラックパール塗装をを与えて上級感も演出している。デザインそのものは収納スペースを効率的に配置した機能的なもので、それと同時にデザイン的にもスペースを感じるものとした。スピードメーターはワゴンR初となるセンターメーターを採用。

ステアリングは本革巻ステアリングホイール。ターボ仕様では手元で任意に変速可能な「パドルシフト」付き。

スピードメーターはタコメーター付き。右側の液晶は「マルチインフォメーションディスプレイ」で、燃料計、外気温、シフトポジションのほかマイルドハイブリッドの状態も表示する。

フロントシートはベンチシートタイプ。スティングレー専用となり、ブラックシートに赤のアクセントを与え、ドアトリム表皮も赤とすることでインパネ同様に上級感を演出。

リアシート。スライド機構付き。

リアドア両側には軽自動車初となるアンブレラホルダーを標準装備とした。

ラゲッジルーム。

リアシートを倒した状態。

ラゲッジルーム開口部は上述のとおりコンビネーションランプがバンパー部に移動したことにより軽ワンボックスのような大開口部を実現。おおきな荷物を載せる際に重宝する。

6代目ワゴンRベースの4代目・ワゴンRスティングレーはそれまでのイメージを完全払拭した個性的な顔にモアスペースの室内空間、進化したマイルドハイブリッドに(現状では)ワゴンRシリーズ唯一のターボ仕様、パワーアップした自動ブレーキなどデザインとメカニズムの両方で大幅グレードアップしたモデルチェンジとなった。デザインは上述のとおりライバルのいずれにも似ていない超個性的なもので、好き嫌いがはっきり出る部分だが、各社デザインや機能性などが似たり寄ったりする中ではこういった唯一無二的なものも重要なのかもしれない。よ~く見るとどこからしらに往年のカスタムモデルである「ワゴンR RR」の雰囲気も持っており、RR好きにも受け入れられそうだ。
ものすごく個性的なデザインだがワゴンRシリーズとしては6代目では3種類の顔を用意するため、その一番尖ったモデルとしてはこれがしっくりくるような感じもする。逆説的にはここまで大変革を行なった背景にはこの手の市場でかつてほどの販売台数をいじできない王者スズキとしてのあせりも垣間見えてくる...兎にも角にも最近のスズキの軽のデザインセンスは好き嫌いがはっきりでるものの、他社には真似できない独創的かつ個性的な部分が多く、この点は評価が高い部分である。
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