2017
03/19
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2017年2月にフルモデルチェンジし、6代目となったスズキ・ワゴンR。6代目の大きな特徴は大幅に変更されたデザインとマイルドハイブリッド(旧称:S-エネチャージ)の進化、デュアルカメラブレーキサポートに変る「デュアルセンサーブレーキサポート」や、「ヘッドアップディスプレイ」の軽初採用、さらに広くなった室内空間や利便性能の向上などがあげられる。
まずデザイン面ではそれまでの4代目~5代目にかけてのワゴンRのイメージを大幅刷新。デザインには初代ワゴンRのモチーフを取り入れかつそれまでのノーマルとカスタムモデルの2本構成からノーマルを1種類、カスタムを2種類の合計3種類の顔つきの異なるモデルを設定した。これはワゴンR史上では初の試みで、先行するスペーシアシリーズ(スペーシア、スペーシアカスタム、スペーシアカスタムZ)に続く2例目の3モデル構成となった。なお、本稿で扱うのは標準モデル(無印ワゴンR)の上級グレードで、ハイブリッド専用となる「ハイブリッドFZ」である。

インテリアでもワゴンRでは初となるセンターメーターを採用。インパネデザインも水平基調をベースに横長のインパネカラーパネルにより開放的な視界と室内空間を演出している。
先代までの「S-エネチャージ」は6代目で一般的な「マイルドハイブリッド」に名称変更。システムもISG(モーター機能付き発電機)を高出力化し、リチウムイオン電池も大容量化したことでモーターによるクリープ走行(アイドリングストップ後の発進時に最長10秒間)、発進から時速100kmまでのモーターアシストなどが可能となり、ハイブリッド機能の強化とさらなる低燃費(33.4km/L(JC08モード))を実現した。

またボディも軽量化と高剛性を両立した新プラットフォーム「ハーテクト」を採用。足回りやボディ、プラットフォームの軽量化により先代比20kgの軽量化を実現。
安全技術としてはそれまでの2台のカメラを用いた「デュアルカメラブレーキサポート」から、単眼カメラと赤外線レーザーセンサーを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポート」に変更。先代のデュアルカメラブレーキサポートでは非搭載だったハイビームアシスト機能を新たに盛り込み、従来どおりの誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能を搭載している。さらに軽自動車としては初の「ヘッドアップディスプレイ」を新採用。走行中の視線移動を少なく、安全運転に配慮した。

室内空間は6代目で新プラットフォーム「ハーテクト」の採用により完全新設計。室内長は歴代最長の2450mmを実現(先代比で約300mmアップ)し、広々とした室内空間した。また、リアコンビネーションランプを初代と同じバンパー下部に移動したことでラゲッジルームの開口部を100mm拡大。3代目エブリィワゴンのように商用車のような使い勝手を実現した。

フロントデザイン。FZというグレードは元々、先代の5代目後期モデルでS-エネチャージ(マイルドハイブリッド)を標準搭載した上級グレードとして登場したグレードだ。5代目後期では専用の大型メッキグリルで精悍さや存在感をアップさせていたが6代目ではグリル変更にとどまらず、ヘッドライトやバンパーなども専用設計。ベーシックなFAやハイブリッドFXと差別化しもうひとつのワゴンRとして登場させた。

一番の特徴はヘッドライトとグリル。それまでのどの軽自動車にもなかった2段構成のヘッドライトにメッキグリルで標準ワゴンRともスティングレーとも全く異なるデザインとなっている。普通車でいうところのアルファードやヴェルファイア、エルグランドなど高級ミニバンを連想させるデザインで、迫力感はカスタムモデルのスティングレーに引けを取らない。ヘッドライトはロービームがLEDヘッドライトとなる。

サイド。先代の5代目やその前の4代目ではスタイリッシュな箱型ボディフォルムとなっていたが、6代目ではその雰囲気が薄くなり、再び箱型のイメージが強くなった。ボンネットのエッジは少しきつくなり、Aピラーをスリム化。ドアミラーは小型化し先代よりも下方へ移動。同時にクォーターガラスを広く取ることで右左折時の視界を向上させた。リアガラスも特徴的な台形型とし、リアクォーターガラスを新設して後方視認性を高めている。リアクォーターガラスは3代目ワゴンR以来の復活をはたした。ベーシックなFA&ハイブリッドFXとこのハイブリッドFZではサイドビューはほぼ同じだが、ハイブリッドFZでは先代と同じく下部にはアンダースポイラー、ドアミラーはLEDターンランプ付き、

キーレスプッシュスタートシステム(エンジンスイッチ、携帯リモコン、リクエストスイッチ(フロントドア&バックドア))が標準装備となる。このほか全面UVカット機能付ガラス、フロントドアはプレミアムUV&IRカットガラス、フロントガラスはIRカット機能付きとなる。

足元は14インチアルミホイール。

リア。こちらも大きくデザイン変更され、コンビランプはそれまでの両サイド真ん中から初代ワゴンRのようなバンパー下部に移動した。コンビランプが無くなったことによりリアハッチ開口部は軽商用ワンボックスのように拡大。利便性を向上させている。またスタイリング的にも初代ワゴンRを彷彿とさせるもので、懐かしさと近代風がミックスしたリアビューとなっている。ハイブリッドFZではハイマウントストップランプ付きルーフスポイラーを標準装備。

コンビランプはFAやハイブリッドFXと同じ。ノーマルモデルでもインナーメッキを用いて質感をアップ。ストップランプはLEDとなる。

エンジンはR06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。最高出力は52ps(38kW)/6500rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/4000rpm。これにマイルドハイブリッド仕様としてISG(モーター機能付発電機)と専用リチウムイオンバッテリーがプラスされる。

モーターの最高出力は2.3kW、最大トルク50N・m。トランスミッションは副変速機内蔵のCVTのみで、駆動方式はFFまたは4WDとなる。安全技術としてはエマージェンシーストップシグナルとEBD付4輪ABS+ブレーキアシスト、横滑り防止装置のESP(車両走行安定補助システム)を全グレードで標準装備。

自動ブレーキ関連ではオプション(セーフティパッケージ)で「デュアルセンサーブレーキサポート」を設定。フロントガラスに設置した2つのセンサーで前方の歩行者や自動車を感知。近距離や夜間の検知に強いレーザーレーダーと歩行者認識が可能な単眼カメラの組み合わせでコンパクトなシステムとした。また、先代には無かったハイビームアシストも新たに追加されより魅力的なシステムとなっている。

デュアルセンサーブレーキサポートでは前方衝突警報機能、前方衝突軽減ブレーキアシスト機能、自動ブレーキ機能により衝突軽減をアシストするほか、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車お知らせ機能、ハイビームアシスト機能が備わる。

さらにデュアルセンサーブレーキサポートのオプション選択時は軽自動車としては初となるヘッドアップディスプレイを新設定。ステアリングの前方にスピードメーターとは別の専用ディスプレイを設けてそこに車速や前方衝突警報/自動ブレーキ作動状況、車線逸脱警報、シフトポジション、凍結警告などを表示することでドライバーの視線移動を少なくし安全運転に配慮した。

インパネ。6代目ワゴンRでは外装と共にインパネデザインも大幅刷新し、かつハイブリッドFZではブラックインパネを採用。デザインはベーシックなFAやハイブリッドFXと同じだが、インパネ全体をブラックカラーで統一することで上級感を演出している。デザインそのものは収納スペースを効率的に配置した機能的なもので、それと同時にデザイン的にもスペースを感じるものとした。スピードメーターはワゴンR初となるセンターメーターを採用。

収納スペースも助手席のインパネのくぼみを持たせ「助手席オープントレー」を新たに設けたほか、従来どおりのインパネアンダートレ、ドリンクホルダー、ショッピングフック、フロントドアポケット、グローブボックス、助手席シートアンダーボックスなどを配置。

ステアリングは本革巻ステアリングホイール。

オーディオパネルも特徴的なセンター配置。


6代目ワゴンRから「全方位モニター」をオプション設定。フロントカメラ、サイドカメラ(左右)、バックカメラの軽4つのカメラでクルマを真上から見たような俯瞰(ふかん)の映像などを7インチの大画面モニターに映し出すもので、狭い場所での駐車や狭い道路でのすれ違い時に効果を発揮する。

スピードメーターはタコメーター付きの2眼タイプ。右端の液晶パネルは「マルチインフォメーションディスプレイ」で燃料計、外気温、シフトポジションのほかマイルドハイブリッドの状態も表示する。

フロントシートはベンチシートタイプ。上級感のあるブラックシート表皮(ファブリック)となる。

リアシート。スライド機構付き。

リアドア両側には軽自動車初となるアンブレラホルダーを標準装備とした。

ラゲッジルーム。

リアシートを倒した状態。

ラゲッジルーム開口部は上述のとおりコンビネーションランプがバンパー部に移動したことにより軽ワンボックスのような大開口部を実現。おおきな荷物を載せる際に重宝する。

6代目ワゴンRのハイブリッドFZは、専用のフロントデザインにマイルドハイブリッド、オプション設定ではあるがデュアルセンサーブレーキサポートに全方位モニターなど内外装とメッキグリル、安全装置でフルモデルチェンジに相応しいアップデートが行われたモデルである。先代のFZグレードではそこまでデザインが差別化されていなかったが、6代目では全く異なる存在感の大きい専用デザインが与えられ、スティングレーにも引けを取らない個性的な顔つきとなっている。加えてマイルドハイブリッドの進化や自動ブレーキ面でも細かなアップデートが加えられ先代よりも機能性がアップした。デザインの好みや予算に余裕があれば素直にオススメしたいモデルといえるだろう。ちょっと残念なのはターボモデルが未設定な点。これだけ出来が良いのだからちょっとした遠出や高速道路で重宝するターボモデルの設定があるとなお使い勝手や完成度が増すはずである。このあたりは市場やユーザーの反応により後に追加されることとなるだろう。
ちなみにデビューから一ヶ月後の2017年3月には伝統的にマツダへ「2代目フレアXS」としてOEM供給された。マツダ仕様ではエンブレムの変更のみや全グレードでハイブリッド仕様のみ、全方位モニターが非設定となるなど若干魅力減な部分もあるものの、マツダブランドのイメージが与えられるため人によっては好みかもしれない。気になった人は合わせて「2代目フレアXS」もチェックしてみて欲しい。
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