2016
11/23
水

あまりというのは、実はスズキには2009年まで、「Kei」というハスラーと同じコンセプトの車があった。生産終了となったいまでも雪国では「Kei」が生活の足として現役だ。それはほどよい車高と大きめのタイヤを持つ軽自動車がワゴンRよりも雪道では強く、ジムニーよりも車内が広くて使いやすいためである。今回登場となったハスラーはその「Kei」の後継モデルとしつつ、新たに個性的でポップなキャラクターを与え、積雪地域でのKeiの乗り換え需要と新たな客層を狙ったモデルである。

ハスラーはKeiを作った時と同じ手法で、売れ筋であるワゴンR(※Keiのときはアルト)のプラットフォームを流用し、ボディと内装を新設計。Keiのときと同じくベースモデルよりも車高を上げて最低地上高をアップ(FFで180mm、4WDでは後輪のデフ下は175mmを確保)。

※アプローチアングルは28度、デパーチャーアングルは46度、ホイールベースは2425mm
さらにワゴンRよりもひと回りかふたまわり大きな大径タイヤ(15インチ)を履かせることで悪路、特に積雪地域の雪道などでの走破性を高めた車である。
エンジンはベースとなった5代目ワゴンRと同じR06A型を採用。自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類を設定し、「スズキグリーンテクノロジー」を適用。新軽量衝撃吸収ボディー「TECT」に加えてアイドリングストップ時でも冷たい風を送り出せる「エコクール」を最廉価のAグレード以外で標準装備。また、エネチャージの搭載でCVT・自然吸気エンジンのFFモデルでは29.2km/l(JC08モード)、CVT・自然吸気エンジンの4WD仕様でも25.2km/l(JC08モード)とワゴンRゆずりの高い燃費性能を実現している。先進安全技術として、レーダーブレーキサポート「衝突被害軽減ブレーキ」、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESPをセットでAグレード以外のCVT車に標準装備とした。
さらにハスラーはKei時代には無かった悪路走破性を高める「グリップコントロール」を4WD仕様車で標準装備。これ以外では坂道でゆっくりと下る「ヒルディセントコントロール」も標準装備とし、Kei時代よりもSUVの性能をアップさせている。

そして2015年5月、ハスラーは5代目・後期型ワゴンRで先行していたマイルドハイブリッドシステムの「S-エネチャージ」を適用し、後期型となった。本稿で扱うのはこのS-エネチャージ適用以降のハスラーである。
前期型までのエネチャージではバッテリーとは別の第2の蓄電池を設け、オルタネーターの代わりに蓄電池から電力を供給することで無駄なガソリン消費を抑えるものだったが、S-エネチャージではモーター機能付きのオルタネーターを採用。発電の他、エンジンのアシスト源(スターターモーター機能とモーターアシスト機能)として使うことでワゴンRに続きハスラーもマイルドハイブリッド仕様に進化した。さらに蓄電池は高効率リチウムイオンバッテリーを採用したことで、充電や給電性能を向上。モータアシストに必要な大電流に対応させた。これらS-エネチャージを採用したことで燃費性能はさらに向上し、自然吸気エンジンのFFモデル・CVT仕様で32.0km/l(JC08モード)。同4WDでも30.4km/l(JC08モード)を達成し、リッター30kmの大台に到達。前期型の初期よりも燃費をアップさせた(※これによりハスラーのS-エネチャージ仕様車はエコカー減税の対象車種となる)。

その他全グレードで新ボディカラーとなる「クリスタルホワイトパール」、「クリスタルホワイトパール ブラック2トーンルーフ」を当たらに設定。ハスラーの魅力をアップさせたマイナーチェンジとなっている。

フロントデザイン。2015年4月マイナーチェンジでは外装上の変更点はほとんどなし。よって正面やサイドからは見分けが付きづらい。前期型に引き続きスズキの代表的な軽RVであるジムニーの面影が見えるフロントデザインで、SUVらしくバンパー下部にはバンパーガーニッシュを備え、バンパーの一部とバンパーガーニッシュはシルバー塗装される。オプションのフロントエンブレム(HUSTLER)を付けるとより個性的にかつレトロ感もプラスされる。

ディスチャージ仕様では(G、Gターボにセットオプション、X、Xターボは標準装備)、ポジションライトがLED化されイカリングのようなヘッドライトとなる。

サイド。このあたりもデザイン上の変更点は特になし。ベースは同社のワゴンRだが、最低地上高は180mm(4WDではリアのデフ部分が175mm)に高められており、ちょっとした雪道やぬかるみに最適だ。デザインもボンネット部分を比較的長めに確保し、Aピラーを立たせるさせることでSUV風のスタイリングと適度に広い室内空間を両立した。前身モデルのKei時代では室内長が1685mmだったが、ハスラーではこの設計により2035mmを確保。実に35cmも長くなった。さらに室内高さはKeiの1265mmに対しハスラーでは1250mmと若干低くなっているものの、室内幅はKeiの1220mmから1295mmにアップ。特に長くなった室内長によりかなり広く感じることだろう。

上級グレード(GとGターボ)ではターンランプ付きドアミラーを標準装備。ヒーテッドドアミラーは全グレード標準装備。

足元はAグレードとG系グレードで15インチカラードスチールホイール(鉄チンホイール)。スチールホイールでありながらハスラーに良くマッチするデザインとなっており、特にカラー(ホワイトorダークグレー)化されているため雰囲気は良い。

上述のXとXターボでは15インチアルミホイールとなる。

ボディカラーには2トーンルーフカラーを含む最大全11色を用意。Keiの後継として地味なカラーから既存のKeiユーザー以外(特に若者向け)の鮮やかなカラーまで多彩なラインナップとなっている。
なお、2015年5月マイナーチェンジでは「パールホワイト」との入れ替えで「クリスタルホワイトパール」を新設定。ツートン仕様も同様に変更され、「クリスタルホワイトパール」、「クリスタルホワイトパール ブラック2トーンルーフ」の2色が追加。
さらに2015年12月マイナーチェンジでは「クリスタルホワイトパール ブラック2トーンルーフ」を廃止し、変わって「アクティブイエロー ブラック2トーンルーフ」、「ポジティブグリーンメタリック ブラック2トーンルーフ」を設定。加えて新カラーとして「シフォンアイボリーメタリック」が追加となった。

リア。後期型ではエネチャージから「S-エネチャージ」に置き換わったため、エンブレムも「S-ENECHAGE」に変更されている。ここがおおまかに後期型かを見分けるポイントとなる。これ以外は前期と同じでマルチリフレクタータイプのコンビランプ(※ストップランプはLED仕様)と無着色&一部シルバ塗装のバンパーが組み合わされる。

エンジンはR06A型3気筒DOHC自然吸気エンジンと改良型R06A、同3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンの3種類。自然吸気エンジンでは最高出力52ps(38kW)/6000rpm、最大トルク6.4kg・m(63N・m)/4000rpmを発生。ターボエンジンでは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク9.7kg・m(95N・m)/3000rpmを発生する。S-エネチャージ仕様では圧縮比の向上やEGRシステム採用に加え、吸気、排気系を見直し、低中速の動力性能を高めた改良型R06Aとなり、カタログスペックも最高出力52ps(38kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/4000rpmに変化している。トランスミッションはCVTまたは5MTで駆動方式はFFまたは4WDとなる。ただし、5MTに関しては廉価グレードのAとミドルグレードのGのみで、上級グレードのXに設定はなく、またターボとの組みあせも無い。
後期型では自然吸気エンジンのGとXグレードのCVT仕様車で既存のエネチャージがS-エネチャージに置き換わった。S-エネチャージでは従来型のオルタネーターに加えてアシスト用のオルタネーター機能付きのモーター(出力1.6kW)が加わり、モーターによる回生発電&アシストのマイルドハイブリッド仕様となる。。特にモーターアシスト領域がエネチャージの「15km~85km/h」に対し、「発進後~85km/h」に拡大している。エコクールが全グレードで標準装備となる。
S-エネチャージではハイブリッド化による走りのモーター感は皆無なものの、登坂時や発進時ではモーターのアシストで若干登坂能力が改善されており、特に自然吸気エンジンでは効果が期待できる。さらに素晴らしいのはアイドリングストップ時の再始動音で、あの独特のエンジンスタート音がとても静かな点。これは確実に軽自動車の質感を向上させるポイントである。

ハスラーのS-エネチャージ適用直後は自然吸気エンジンしか置き換わらなかったが、2015年12月マイナーチェンジでは遂にターボエンジンもS-エネチャージ化。一番燃費の悪いターボの4WDでも26.2km/l(JC08モード)となった。さらに最上級のXとXターボグレードではそれまでの「レーダーブレーキサポート」からステレオカメラを用いた「デュアルカメラブレーキサポート」に変更し、さらなる安全性を向上させた。
それ以外のGとGターボグレードでは引き続き「レーダーブレーキサポート」、「誤発進抑制機能」、「エマージェンシーストップシグナル」、「車両走行安定補助システム(ESP)」の4点を標準装備。Aグレードは従来通りエネチャージや自動ブレーキの装備がない簡素グレードとなる。

「デュアルカメラブレーキサポート」は従来のレーダーを用いたシステムとは異なり、名前の通り2台のカメラで衝突回を行うものである。この手の技術ではスバルが「アイサイト」として先行しているが、スズキもついにステレオカメラの採用で並んだ感じだ。特に普通車ではなく軽自動車でこれを搭載したことはかなり大きく、レーザーレーダーとカメラを併用するダイハツを大きく引き離した形だ。

「デュアルカメラブレーキサポート」のステレオカメラは特に対車での動作が素晴らしく、以前のレーダーブレーキサポートでは~30kmまでが作動領域だったのに対し、なんと~100kmまでとかなりの進化を遂げた。これ以外にS-エネチャージ搭載グレードでは安全装置として誤発進抑制機能をエマージェンシーストップシグナル、ESPを標準装備。車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能はXとXターボのみ。

4WD仕様車では上述の通り悪路走破性を高めるため「グリップコントロール」を標準装備。軽乗用車では初となるグリップコントロールは一般的なSUVが持つデフロック機能に近いシステム。デフロックそのものは持たないものの、悪路でスタックしそうになったとき自動でスリップしているタイヤを感知。そのタイヤに対して機械が自動的にブレーキを与えることでグリップする側の駆動力を確保し、スムーズな発進をアシスト。これにより日常走行(特に市街地等での雪道)での走破性が高くなっている。

これ以外では坂道でゆっくりと下る「ヒルディセントコントロール」も標準装備。

FFモデルと4WDモデルの両方(Aグレードを除くCVT仕様)でヒルスタートアシストを標準装備。Kei時代ではいずれの装備(※Kei FISフリースタイルカップリミテッドを除く)もなく、ちょっと車高の高い生活四駆程度だったが、ハスラーではよりSUVとしての性能をアップさせている。
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インパネ。ハスラーではボディカラーに合わせてインパネカラーが異なる。オレンジ系とイエローからのみインパネも同色カラーとなり、それ以外ではホワイトカラーとなる。上級グレードでは本革巻ステアリングホイールを標準装備。デザインはヘッドライトをモチーフに丸型のエアコンルーバーリング、メーターリング、スピーカーリングを採用。チルトステアリングはAグレード以外で標準装備

「アクティブイエロー ブラック2トーンルーフ」カラーではイエローのインパネとなる。

スピードメーター。前期と同じくエコ運転を上部のグリーン(エコ)やブルー(通常)、ホワイト(エネルギー回生)状態を光りで表示(ステータスインフォメーションランプ)。さらにアイドリングストップインフォメーションを液晶パネルに表示する。タコメーターは液晶パネル部分の表示を切り替えて表示させる(写真は燃料計を表示中)。ただし、エネチャージの搭載がないAグレードでは非装備。

S-エネチャージ搭載モデルでは液晶パネルに回生発電やモーターアシストなどの状態を表示する「エネルギーフローインジケーター」が追加された。

フロントシートはベンチシートタイプ(ATモデル)。シートはボディカラーに合わせてシートパイピングが変更される(オレンジ、ブルー、ピンク、ホワイト、グリーン(※2015年12月追加)の計5色)。

5MTのシフトノブ。

MT仕様ではセパレートタイプとなる。AグレードのFFを除きシートヒーターを標準装備。

リアシート。スライド機構を備え、左右独立して最大160mmスライドする。

ラゲッジルーム。

リアシートを倒した状態。

スペアタイヤは装備せず、代わりにパンク修理キットが備わる。

初代・ハスラーの後期型は前期型の外観に加えS-エネチャージの置換により燃費性能がアップ。自然吸気エンジンではモーターアシストにより登坂能力が若干向上するなどより魅力がアップしたマイナーチェンジとなっている。特に上級のXおよびXグレードでは2015年12月マイナーチェンジでステレオカメラによる「デュアルカメラブレーキサポート」も標準装備となり、万が一のときの備えもより強力になった。デザイン性に加えて燃費や自動ブレーキなど前期よりも付加価値がプラスされた形だ。特に自動ブレーキは後からつけようとしてもなかなか付けられないものなので、新車で買う場合はよく検討のうえどのグレードにするか選択してほしい。
なお、2015年12月マイナーチェンジではターボモデルのS-エネチャージ&デュアルカメラブレーキサポートの適用の他、魅力的な特別仕様車「JスタイルⅡ」が設定されている。こちらはより個性的な専用フロントグリルとHUSTLERエンブレム、専用バンパーガーニッシュを標準装備とし、内装では専用シートと専用インパネ。メカニズムでもS-エネチャージとデュアルカメラブレーキサポートを標準装備としたグレードである。特に特別仕様車でもターボモデルの設定があるのがポイントで、もしハスラーのターボを検討している場合はあわせてこちらもチェックしてみてほしい。
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