スズキ Kei FISフリースタイルカップリミテッド(後期・３型 TA-HN22S型)

KeiはスズキのクロスオーバーSUV型軽自動車。「ＦＩＳフリースタイルワールドカップリミテッド」は国際スキー連盟「FIS」とタイアップした特別仕様車である。本稿では2002年11月登場の最終モデル(３型もしくは後期型)を扱う。


スズキのKeiは登場から生産終了までのサイクルが長く、一度もフルモデルチェンジされることなく大きな３度のマイナーチェンジを経て約１１年続いたロングモデルであった。その間に複数の特別仕様車が登場したがその中で最も珍しいといえるのがこのFISフリースタイルカップリミテッドである。

FISとは国際スキー連盟のことで、スキー場へ向かうイメージの強い車種(ジムニー、Kei、エスクード)とタイアップすることで販売拡大を狙うものであった。Keiにはじめて設定されたのが2000年11月。初期型もしくは１型(１期)と呼ばれるこのモデルは見た目はほぼ同じで内装に手が入れられたモデルだったが次の2002年１月のマイナーチェンジで専用外装品が与えられた。まるでカスタムカーのようなメッシュグリルやメッシュバンパーが特徴で個性あるものだった。そして2002年11月には3回目の変更が与えられいわゆる3期型となったのがこの写真のモデルである。



3型(3期)では再びバンパーが専用品となった。今度はカスタムカーではなくジムニーのようなSUV風のグリル＆バンパーとなっているのが特徴である。格子状に覆われたグリル、大きなフォグランプ、そしてSUVの特徴であるフロントスキッドプレートが付き、ライト系のSUVのイメージから本格派SUVを連想させるものである。



サイドから。LEDターンランプ付ドアミラーを標準装備し、ドアには「FISフリースタイルカップリミテッド」のデカールが付く。



リア。上半分はBターボと同じ構成でハイマウントストップランプ付きリアスポイラーを備えるが、バンパー部分はこれまた専用品で、SUV風のバンパーモールが与えられいる。右側にはデカールでブランド名と車名が、左側にはFISのデカールが付いている。

エンジンは３気筒のターボのみ。ただし出力は60馬力のMターボとなる。トランスミッションは4ATのみで駆動方式はFFまたはパートタイム4WDとなる。そしてこの4WDはKei史上唯一のEMCD（電子制御カップリング）付きで、これ以外のKeiの4WDとは異なる仕様となっている。このEMCDはシボレー・クルーズの4WDで採用されたものと同じで、後にSX4へと受け継がれたものだ。具体的にはFFモード、4WDオートモード、4WDハードモードの3種類があり、これを状況に合わせて変化させることができる。4WDハードモードでは前後のタイヤが直結となりスタック時に有効な機能となる。このようにSUV色を強めた装備からも３期型ではSUVの外観をしている。



インパネ。シフトレバーすぐ下にはEMCDのスイッチが備わる。FFではここはコインケースで、これ以外の4WDでは右側にシートヒーターのスイッチがあるが、EMCD搭載のFIS仕様では左側にスイッチがある。この他ステアリングは本革巻仕様となる。



スピードメーターはスポーティでKeiワークス(AT用)と同じもの。



フロントシートはセパレートタイプ。FIS仕様の専用品だ。



リアシート。足元が狭いのは他のKeiと同じ。



ラゲッジルーム。同様にこの部分は広い。



リアシートを倒した状態。Keiはこのようにフルフラットになるのが特徴で、荷室の使い勝手が良い。ジムニーよりも広くより多くの荷物が載る。



KeiのFISフリースタイルカップリミテッドはKeiの中でも珍しい電子制御カップリング(EMCD）を搭載した本格的4WDモデルである。これ以外の4WDのKeiはビスカスカップリング式でデフロック機能が無いため、「なんちゃってSUV」と称されるのだが、FIS仕様に至ってはこれが無く、ジムニー寄りの走破性能を実現している。ただ、EMCDのKeiはこの３型FIS仕様にとどまり、次のマイナーチェンジで搭載されることは無かった。当時の他のグレードのKeiと比べると価格差が最大50万円近くも開き、かなり高価な軽自動車であったことが想定される。ゆえにあまり売れなかったのだろう。新車時130万ぐらいの軽自動車はいまでこそそんなにびっくりしないが2003年当時では明らかに高く、Keiという足車(アルトの車高高い版)的な購買層にとっては高値の華だったはずだ。
中古市場では前述のとおりあまり売れなかったことから極端な希少車となっており、この３型もめったに出てこない。これを探すのは一苦労だが、Keiが好きでさらにEMCDを試してみたいというマニアなユーザーであれば探す価値はあるかもしれない。なお、Keiの後継であるハスラーではEMCDではなく、その代わりとなるグリップコントロールが搭載されている。


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